開催前は「大失敗」「閑古鳥」などと言われ、叩かれていた大阪・関西万博。
過去の万博でも(日本に限らず)、開幕してから評価が一転するのがパターンですが、大阪・関西万博もその例に漏れず。6月以降は日を追うごとに来場者数も増えてきています。
一方で、来場者が増えてくるとともに言われるようになってきたのが、「人気パビリオンの予約が取れない」「パビリオンの入場待ち時間が尋常ではない」という声。
実際、2ヶ月前、7日前に申し込める抽選予約では「第5希望まで全部落選」。3日前の先着予約では、「予約開始時間前からサイトにアクセスできず、繋がった時にはすべて予約終了」といった声が大多数になってきました。もはや事前予約は奇跡に近いと言わざるを得ません。
予約無しで入場できるパビリオンについても、待ち時間なく入れるパビリオンが多くある一方で、イタリアパビリオンなど3〜5時間以上の待ち時間という例もあります。
期間パスで毎日のように行くことができる大阪近隣の方は別として、遠方から行く人は、人気パビリオンを利用するのは絶望的と言わざるを得ない状況です。
しかし、過去の万博を見ると、実は人気パビリオンの一部が、万博閉幕後に別の場所で体験できるようになった例があります。
例えば、2005年の「愛・地球博」にあったパビリオンでは
・長久手日本館「地球の部屋」は2006年、国立科学博物館「シアター360」に(現在も運営中)
・三菱未来館@earth「もしも月がなかったら」は2006年、ハウステンボス「Kirara」に(2021年8月終了)
・三井・東芝館「グランオデッセイ」は2007年、ハウステンボスに(同名・2017年1月終了)
・JR東海 超電導リニア館は、規模を拡大する形で、2011年に「リニア・鉄道館」として開業(現在も運営中)
・「サツキとメイの家」は、閉幕後も施設が残り、現在はそのままジブリパーク「どんどこ森」の主要施設に
それぞれ閉幕後でも体験することができるようになっていました。
その他の万博でも、1970年・大阪万博での「太陽の塔」(内部も修復し現在観覧可能)や、1985年・つくば万博での富士通パビリオン「ザ・ユニバース」(1992年・千葉幕張「富士通ドームシアター」。2002年閉館)、1990年・大阪花の博覧会での「ドルアーガの塔」「ギャラクシアン3」(1992年・東京二子玉川「ナムコ・ワンダーエッグ」。2000年閉園)などがあります。
パビリオンや施設よりももっと小規模の「展示物」では、例えば1970年・大阪万博で大人気だった「月の石」はその後、同様の展示物が様々な場所で展示されました。今回の大阪・関西万博でも「月の石」は展示されています(石自体は別の時に採取されたものですが)。
では、今回の大阪・関西万博のパビリオンで、今後別の場所でも体験できそうな施設を推測してみます。
●XR系コンテンツ
ガスパビリオンの「おばけワンダーランド」やシグネチャーパビリオン・いのちの冒険「超時空シアター」など、民生機の「Meta Quest3」を使用しているパビリオンのコンテンツは、移設が行いやすいと思われます(ただし、現実映像とリンクする部分において、万博パビリオンのシアターと構造を同じにするもしくはXRコンテンツを現実に合わせて改修する必要はあります)。
例えばガスパビリオンを運営する一般社団法人日本ガス協会に加盟している東京ガスネットワークの「がすてなーに」、大阪ガスネットワークの「ハグミュージアム」など、既存の博物館のリニューアルコンテンツとして導入される可能性があるでしょう。
大阪ヘルスケアパビリオンの「モンスターハンターブリッジ」は、XRだけでなくシアター全体の音響や振動などもあるため移設は難しいかもしれません。しかし、「モンスターハンター」のXRコンテンツは、過去に実験的な内容でUSJで運営されていた実績があるので、もしかしたら万博閉幕後にUSJに移設という可能性があるかもしれません。
●シアター系コンテンツ
三菱未来館の「JOURNEY TO LIFE」などのシアター系コンテンツは、映画館のような上映設備があれば比較的かんたんに移設が可能でしょう。プレショーなどを簡略化させれば、一般的な科学館などの設備でも対応できるかもしれません。
一方で、「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」などのように、プレショーからメインショーまで、動線を含めて作り込んでいたり、マルチスクリーンのシアターの場合は、なかなか移設は困難です。ただ、過去には、ハウステンボスの「グランオデッセイ」などのようにパビリオン内容をほぼそっくりそのまま移設したという事例もあるので、テーマパークレベルの大規模施設であれば移設の可能性もゼロではないでしょう。
●その他単独展示物
IPS心臓など、単独の展示物は移設が容易です。いずれは全国各地の科学館などに、同じような展示が加わる可能性は高いです(その場合、今よりもっと技術が進んだ最新のIPS心臓が展示されることでしょう)。
今大人気で予約が取れない・待ち時間が長いパビリオンほど、その人気にあやかって「閉幕後にぜひうちの施設で体験できるようにしたい」という施設運営者が多数いると思います。もしかしたらもうすでに水面下では交渉が始まっているかもしれません。
一方で、万博が終わったら二度と見ることができなさそうなものも多くあります。
特に、あまり日本から旅行することができないような国のパビリオンの展示は、今回限りになる可能性が高いです。そういったパビリオンは実は待ち時間が少ない穴場でもあります。
派手な民間パビリオンや、強国パビリオンばかり話題になりますが、万博は本来、様々な国が自国を世界にアピールできる、またとない国際的文化祭であり、各国ともに試行錯誤(時には少ない予算)を駆使してパビリオンを作っていますので、ぜひそういったパビリオンに目を向けて楽しみましょう。