インターネットのより一層の活用を(1999年5月15日記載)

(本記事は「新賀田友義」名義で執筆)

 

ユーザーの意見を直接入手できるインターネットのより一層の活用を   新賀田友義

 最近、インターネット環境の普及が加速度的に増加している。郵政省が発表した「平成10年度通信利用動向調査」によると、一般家庭でのインター ネット利用率は11.0%で前年の調査より4.6ポイントの増加となった。この数字は、インターネットがパソコンマニアのためのメディアから、TVや雑誌 などと同様、一般大衆のためメディアにより近づいていることを表している。
 インターネットメディアがTVや雑誌などのメディアと大きく異なるのは、「情報の双方向性」だ。一般的にはこれを「誰でも簡単にメディアの発信 者と成りうる」こととして解釈している。各アミューズメント企業も自社の情報をユーザーに直接伝える手段としてインターネット上にWEBサイトを開設、新 製品案内や会社概要などを公開している。
 もちろん、この解釈は誤りではない。しかし、インターネットの本当の力を利用するのであれば、さらに一段上の利用が必要だ。それは、「あらゆる 人々が自由に発信した情報から、いかにして必要な情報を選別するか」ということだ。インターネット上に流れる情報の大部分は役に立たないものであろう。し かし、そのなかには企業のアイデアマンが会議や机の前でさんざん悩んでも出てこないアイデアや、ユーザーの今求めているニーズも転がっている。膨大なノイ ズの中から的確な情報を受け取る「受信機」をその企業が持っているか否かで、些細だがヒット商品に結びつく情報を獲得できるか、それとも目の前に流れてい る大きな儲けをみすみす失うかの分かれ目となる。
 特に、ユーザーからの意見やクレームを受け付けるためのメールアドレスを公開するのは重要だ。手紙や電話による受付では届かないような些細な意 見・クレームでも、電子メールやWEBページ上の投稿フォームであれば、ユーザーは気軽に発信してくれる。ユーザーに「自由に意見を発信してもらう」こと で、単にインターネットを見て回るだけでは入手できない、その企業に本当に必要な情報が手に入る。しかし、いくつかのアミューズメント企業のWEBサイト を見て回ったところ、何件かは営業案内と製品案内のみで、製品に関する意見の受付窓口がないものが見受けられた。最悪なのは、その企業への連絡先電話番号 すら記載されていないものがあった。
 また、折角メールアドレスを公開しているのにそれを有効に活用していないWEBサイトもあった。それは、「届いた情報に対し、何の反応も返さな い」サイトだ。たとえ、その企業にとって取るに足らない情報だったとしても、何らかの返事をしなければならない。返事を送ることで、それを受け取ったユー ザーがさらに次の(そして、今度は非常に有益な)情報を届けてくれるかもしれないのだ。1回目に無反応だったら、そのユーザーは2度とその企業に情報は送 らないだろう。返事が遅いのも無反応と変わりない。インターネットメールの礼儀として「届いたメールに関しては最低でも届いた旨を伝えるメールをできるだ け早く送る」というものがある。ユーザーからの質問やクレームに、すぐには回答できない場合でも、「後ほど担当者からお返事します」の一言(できれば、そ の担当者の名前とメールアドレスを併記する)を送るのが望ましい。もちろん、それっきり音沙汰がないのでは無意味だが。
 では、有効に公開メールアドレスを活用するにはどうするのがベストか。規模のそれほど大きくない企業であれば、1つの公開メールアドレスを担当 者が責任を持って毎日チェックし、必要に応じて担当者に振り分けるのが良いだろう。逆に規模の大きい企業では届くメールも膨大になるため、あらかじめ「製 品担当」、「オペレーション担当」、「人事担当」などのように部署で分け、それぞれに担当者を配置するのが効率的だ。
 さらに、重要なことは「届いた情報はそのまま担当部門全員で共有する」ことだ。メール受付担当者が「とるに足らない」と考えた情報であっても、 別の人間にとっては重要な情報であるかもしれないからだ。特にクレームに関する情報は、絶対に担当者レベルだけで処理してはならない。電話や手紙による場 合は、それが徹底している企業でも、なぜか電子メールで到着したものに関してはおざなりになっている場合があるが、それでは意味がない。
 インターネットはこれからもユーザー数を増やし、いずれは電話などの既存メディア並みの普及率となる可能性を秘めている。この新しいメディアを いかに利用していくかが今後の企業経営に密接に結びついていくだろう。これからも急速に拡大を続けるインターネットについて、各社がいまいちど再考するべ き時であると考える。