(2024年12月発行「XRアトラクションガイド2025年版」掲載)
2023年下旬に発売されたMeta Quest3に加え、2024年は「AppleVisonPro」と「Meta Quest3s」の発売が話題になりました。一方は60万円前後の高額プロ向け、他方は前身のMetaQuest3廉価版で5万円前後のコンシューマー向けと価格は1桁違いはありますが、共通するのは「ビデオシースルー(VST)型MR」ということ。それ以前にもHoloLens、Magic Leap、Nreal AirなどのMR HMDはありましたが、これらは光学シースルー(OST)型でした。
OST型MRはHMDが軽量化できるものの、CG映像の先に現実が透けて見える形になるため没入感が損なわれるというデメリットが有り、工場の作業アシスタントなどの産業領域向けが中心でした。またVST型MRは、現実の世界を「カメラで撮影しCG処理してHMDに描く」ため、以前は処理速度の遅延で、酔いを起こしやすいという問題などがあり、XRアトラクションへの導入には難がありました
しかし技術の発展により現在ではVST型MRでも、ほぼ人間が感じられない程度まで遅延が軽減され、XRアトラクションにも充分に対応できるようになりました。
XRアトラクションでネックの「客回転」の改善にも期待
従来のVRでは、現実世界が完全にシャットアウトされるため、特にフリーローム型XRでは、安全のためにプレイフィールドにゲストを入れてからHMDなどの機器を装着するという手順が必須です。これが、客回転の悪さに影響していました。遅延のないMRであれば、前のゲストがプレイフィールドに滞在している間に、前室で機器装着と機器テスト(さらにはチュートリアル)を行い、その後現実映像を表示することでHMD装着状態のままプレイフィールドに移動してコンテンツを開始できるようになります。これにより安全の確保を維持したまま、客回転数を上げることが可能になります(2024年11月Space Travelium TeNQで運用開始の「SORAVEL LINE」が開始時にこの方式を採用)。
これにより、「体験価値は高いが客回転が悪くて利益が低い」というフリーローム型MRアトラクションのデメリットが改善されるので、新規導入に踏み切る施設が増えてくることに期待します。
現実造形とCGそれぞれの得意分野の組み合わせ
MR普及により期待できるもう一つは、アトラクション分野で蓄積された「実物造形」と、VRによる「CG映像」のコラボレーションによる、新たな体験価値の創造です。
【一例】
さらにホラーハウスでは一般的に施設そのものの照明を落としているため、カメラなどでの施設内部監視が困難ですが、VTS型MRであれば施設そのものは明るい状態としながらもHMD上で明度を下げて暗く見せるという手法が使えます。参加者の希望で明るさを変えて怖さを変更するほか、体験者がギブアップする際もHMDを外すだけで明るくなるので安心できるでしょう。
2023年末~2024年初め頃から開発を始めたと思われるVST型MRを活用したXRアトラクションのリリースが2024年から後半に出始めています。現在も開発中のコンテンツは多くあると思われ、2025年にはそれらが多数発表、運営開始となるに違いありません。私自身とても期待しています。